【Fashion Tech】パルコ WEB/マーケティング部 部長 林直孝に聞く、クリスマスギフトキャンペーンの狙いとは?

NEWS 2015.11.25
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ファッション×IT業界で活躍するトップランナーとSTYLER代表の小関が対談していくFashionTech連載!この連載では対談を通して、スタートアップで起業されている方などに、ファッションITの視点からファッション業界の未来について語っていただきます。

第十七回はパルコのWEB/マーケティング部 部長 林 直孝さんとの対談です。現在展開されているクリスマスギフトキャンペーンについてお話を伺いました。

・パルコのギフトコンシェルジュとは?


小関 まず始めに、今回のクリスマスギフトキャンペーンについてお話を伺いたいと思います。今回のクリスマスギフトキャンペーンでは、STYLERも共催させていただき、クリスマスプレゼントの相談をSTYLER上で行うと、パルコのギフトコンシェルジュからも提案を受けることができます。このキャンペーンを始めるきっかけは何だったのでしょうか?

林 パルコでは、昔からお客様の特別な人とか、近しい人にプレゼントを送ることをサポートするキャンペーンをやっているんです。もちろん、今年も表現方法を変えてクリスマスプレゼントを選ぶお客様をサポートするキャンペーンをやることになりました。

クリスマスという大きなイベントに大切な人、いつもお世話になっている人にプレゼントを選ぶのは、変に気を使いすぎてしまうというか、人によっては難しいことなのかなと思います。そこで私たちがパルコにいらっしゃるお客様に伝えたいパルコの価値、強みは、入居している店舗のスタッフが親身にプレゼントの相談に乗ってくれることです。

店舗では元々お客様のニーズに応える接客はできているのですが、今回のキャンペーンではSTYLERを使うことで更にウェブ上でも接客をすることができます。お客様とコミュニケーションを取りながら、商品、ギフトを選ぶことをサポートすることができます。それはパルコが日頃から進めている「ウェブ接客」というコンセプトに合致していますので、クリスマスの企画でスタイラーさんと一緒にやることにしました。

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小関 元々、STYLERはファッションのコミュニケーションのハードルを下げることを目的としています。ファッション市場はどうしても売り手と買い手で情報の格差があるのにコミュニケーションのハードルは高い。異性へのプレゼントを購入する場合は、普段よりも更に何を買ったらいいか分からないし、誰に聞いたらいいのかも分からないと思います(笑)。なので、今回のクリスマスギフトキャンペーンをご一緒に行い、ユーザーのお悩みを解決できるのは本当に良かったなと思います。

林 今までだと、お客様は店頭にきて初めて何を買ったらいいのか相談できるんです。ただ、その店舗でニーズに合った良い提案をしてもらえたらお客様はその店舗を気に入っていただけるけど、店舗の提案がニーズに合わなかった場合はそれで関係が終わってしまうんですよね。もちろん、パルコとしてもお客様に一店舗、一店舗、隈なくまわってもらえればニーズに応える自信はあります。でも、店舗を回ることは労力がかかることだし、どれだけ時間と労力をかけられるかはお客様によります。

パルコがウェブ接客を重要視する理由は、お客様は何か行動を起こす前に自分自身でウェブ上で必要な情報を探すからです。お客様はSNSで評判を探ったり、ブログで必要な情報を得た上で行動しています。その行動パターンになぞらえると、接客も来店前からするのが大切で、ウェブ上でのコミュニケーションが豊かになればなるほど、お客様に来店してもらいやすくなるし、その後の商品購入もスムーズになります。

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今までのパルコがウェブ接客を推進しきれていなかったのは、ウェブ上の双方向でのコミュニケーション。例えば弊社が提供している「POCKET PARCO」というアプリでは、各ショップが発信するアイテムについてお客様から「いいね」や「クリップ」、接客評価について☆をつけるなどのアクションはできていたけど、本当はその先のチャット的なやり取りができるプラットフォームの方が望ましいです。お客様が望めばそういった双方向のコミュニケーションを取れるシステムを導入したいんですが、導入する手前の準備ができていないのが問題でした。

パルコとしてもスタイラーさんのようにプラットフォームとしてウェブ接客のUXをしっかり持っているところと一緒にやった方が、実店舗への送客やテナントがショップの店頭在庫でWEB受注が出来るサービス「カエルパルコ」での購買にも繋がります。そこがクリスマスのキャンペーンを一緒に行うことのメリットと感じました。パルコだけではなく、お客様、テナントにとってもメリットになると考えています。

・パルコが進めるのは、お客様がウェブで感動するような「ウェブ接客」


小関 ウェブサービスはユーザー中心にしか成り立たないと考えています。それこそ、AmazonもECとしては後発ですが、徹底的にユーザー中心のサービスを展開して成功を収めました。なので、STYLERがユーザー中心のオープンプラットフォームとしてユーザーとショップのコミュニケーションの場を提供して、その中でお客様がクリスマスギフトを選ぶことをサポートするキャンペーンを行うことは価値があることだと思います。

プラットフォーム上でのユーザーとショップがコミュニケーションする場合、新規のお客様との接点も増えるし、来店して良い経験をしたユーザーは接客を受けた後も顧客として繋がることができます。

林 そういえば、POCKET PARCOでは接客評価のシステムを導入してから、かなり多くお客様から個々の店員の接客を評価をしていただいています。パルコの想定よりも平均点が良いんですよ。接客について星で評価をいただくだけではなく、コメントを寄せてくれるお客様も多い。そのお客様のコメントの中で僕が心を動かされたのがタワーレコードの接客です。店頭にいらっしゃったお客様が、「探している音楽の鼻歌を歌ったら、店員がぴったりのものを提案してくれて嬉しかった」というものでした。適切な接客をすると、お客様がウェブでわざわざコメントをつけたくなるくらい感動するんです。

今まで接客後の評価を体系的にフィードバックする仕組みがありませんでしたが、ウェブ、スマートフォンを通して日常的に評価をいただけるというのはテナントのスタッフにとっても幸せなことです。その評価を基に接客が改善されれば、お客様にとってもいいことですしね。パルコとしてもウェブ接客を進めていきたいですね。

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小関 アパレルのビジネスは「かっこいい」マスイメージを作りあげて来店を待つというスタイルが一般的でした。でもウェブ接客はむしろ逆で、お客様のニーズありきでずっとリレーションをとっていくスタイルです。従来とは真逆のコミュニケーションだと思いますが、どのようなきっかけでウェブ接客にシフトすることにしたんでしょうか?

林 ウェブ接客にシフトしたきっかけは2010年にショップブログを始めたことです。スタートにあたっては、パルコがショップからあげられて来た様々な情報を都度チェックして、承認したものだけサイトに掲載するという方式を取ろうという議論もありました。もちろん、パルコによる承認制ブログは人的なリソースに限界があるため、実行に移すには問題があります。そこで、やはり承認制ではなく、情報の鮮度と量を重視して、テナント発信でお客様とコミュニケーションを取っていただく方が良いと思いスタートしました。

2012年には、当時ショップブログを最も積極的に活用していた広島パルコでウェブ接客の販売実例があったんです。県外からの旅行でたまたま来店したお客様とブログで繋がっていて、お客様の地元でも同じアイテムが買えるのにもかかわらず、わざわざ広島パルコから現金書留で購入するということが月に何回かありました。そのような良い事例がいくつもあるのなら、パルコ全店の19店舗3000ショップに広げた方が良いと気づいたのが、ウェブ接客を進めたきっかけです。この実例により社内でもウェブ接客に対しての納得感が生まれました。

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・接客が上手い店員はウェブ接客も上手い


小関 広島パルコで特にウェブ接客に盛んだったのは、どのような理由があったんでしょうか?

林 広島パルコは中国地方だけでなく四国エリアからも含め他県からのお客様も多くいらっしゃいます。遠方からお客様に対しては、ご来店前の情報伝達の手段としてブログやSNS等を活用したウェブ接客にも積極的になります。また働いている店員も地域の一番店という自信を持っています。お客様もその店員を信頼してファンになっているという印象を受けますね。それぞれのスタッフがお客様の欲しいと思うポイントをよく掴んでいるので、ブログの文章や写真も上手です。

接客が上手い店員はウェブ接客も上手いというのも気づきでした。去年まではパルコ社内でショップブログやSNSなどのウェブを作ってビジネスを推進する「WEBコミュニケーション部」と、リアル店舗での接客力を上げる「CS/顧客政策部」が別々の部署だったんです。そもそもパルコはウェブとリアルを融合した顧客体験を提供するオムニチャンネル接客を推進していたのに、ウェブとリアルで同じ店員に別々の研修をしていたんですが、これでは研修体制がそもそもオムニチャネルじゃないと気づき、今年になって組織が統合されました。

店員の接客を評価するロールプレイングコンテストでも、今年から来店前のブログやSNSなどのウェブ接客についても審査を導入しています。ウェブ接客審査の評価が高い店員が決勝戦に残る確率が圧倒的に高く、リアルの接客が上手いところはウェブでの接客も上手いということが分かりました。

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小関 リアルでの接客が上手い店員はウェブでの接客も上手いというのは面白いですね。一方で、ウェブ接客の推進で苦労されたこともあったかと思います。ウェブ上の接客が上手い店員は、昇進したり異動することも多いのかと思うんですが、デベロッパーとしてどのようにウェブ接客のナレッジを共有されているんでしょうか?

林 突出してウェブ接客が上手い店員が抜けると、ブログの更新回数が減ったり、投稿の質が落ちたり差は出ることはあります。ただし、突出してウェブ接客が上手い店員がいる店舗は、比較的一人でブログを運営せずにチームで運営しているケースが多いです。一人が抜けてゼロになるかというとそうではありません。ウェブ接客を行う土台が残っているのでそこに積み増したり、新たな個性を乗せたりうまく回していくことができます。パルコでもウェブ接客の土台を組織としてナレッジ化するために、ブログ講習会だとか、「SUTEKI LABO(ステキラボ)」というテナント限定のEラーニングシステムを導入して、隙間時間を利用したウェブ接客を学ぶことのできる体制を整えました。

例えば、POCKET PARCOでは、お客様が気に入った記事をタップするとクリップされる機能があります。アプリをリリースした三月の時点では、お客様のクリップ数は公開されていなかったのですが、数を可視化したらブログの写真の質が上がったんです。おそらくクリップ数が公開されたことで他の店舗に負けたくないという認識が芽生えたんでしょう。また、他の店舗でもクリップ数を多く稼ぐ記事の内容や写真の質を参考にすることで、ナレッジが共有されたんだと思います。パルコがウェブ接客についてマニュアルにしたり、教えに行かなくても自然発生的にナレッジが共有されたんですね。

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・「ウェブ接客」は時間も空間も制約なく接客を拡張できる


小関 ナレッジとして共有されているウェブコミュニケーションの成功例を伺ってもよろしいでしょうか?

林 ブログでのウェブ接客が活発になってくると、テナント自らが運営しているTwitterやInstagramのレベルが上がり、どんどん相互の活用がなされるようになり、自然に外部のSNSでファンを獲得してブログの読者も増えるような事例が出てきました。当然、お客様からはブログでそのまま買いたいというニーズが出てきますので、実際にブログから店員がおすすめするアイテムを購入できるカエルパルコが誕生しました。先ほどの広島パルコの事例のように、現金書留で送るよりかはブログで決済できた方が便利で楽じゃないですか。最初はカエルパルコもショップブログに連動して、アイテムが買えるという導線だったのですが、今は自店のTwitterやInstagramにカエルパルコのURLのリンクを付けることを推奨しています。それからカエルパルコでの売上が増えたんです。

あるCDショップの事例なのですが、今年の三月にあるTV番組でカープ芸人特集が放送されました。ショップの店員は昼前にSNSで放送について前振りをしておいて、番組が始まる時間にハッシュタグで「広島カープ」や「カープ芸人」をつけて広島パルコ限定のカープグッズを投稿したところ、SNSでの拡散が進み、カエルパルコへの流入が一気に増えてかなりの購入につながりました。

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小関 タワーレコードのようなカルチャー系のショップはバズをおこしやすそうですが、アパレルのショップでも同じことはおきそうですね。

林 もちろん、アパレルのテナントでも上手くバズを起こしている事例が増えています。あるレディスブランドでは、よく数量限定のブランドコラボ商品を出されるのですが、もちろん店頭販売に加えて自社ECや他社ECでも販売しています。ただし、自社ECや他社ECではインターネットなので限定アイテムすぐに売り切れます。その場合、店頭にまだ限定アイテムが残っているので、タイミングを見計らってSNSやカエルパルコに限定アイテムの情報を投稿すると、限定アイテムを探していたお客様が集って、一気に売れるということがあります。

小関 限定アイテムをインターネット上で探してカエルパルコで購入できたお客様には、パルコには稀少な商品があるというロイヤリティーが発生してもおかしくないですね。

林 どうしたって今までは接客機会は一日二十四時間のうちの十時間ほどしかなかったのが、ウェブ接客を始めたことによって一気に時間の制限がなくなりました。今年の九月からはカエルパルコによって海外からの注文を受けられるようになりました。時間も空間も制約なく接客を拡張できるのは、ウェブだからこそできることです。今まではアパレル企業の本部の方がEC運営を含めWEBを使ったコミュニケーションを行うことが多かったと思いますが、パルコとしては実際に店頭でお客様との接点を持っている店員に中心的なコミュニケーションを担って欲しいと考えています。実際に店頭のスタッフにウェブ接客を担っていただくことで、お客様に対して良いブランディングもできるということがやってみて分かりました。みんなウェブ接客ができた方がハッピーになれるってことですね。

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小関 実際に売上が立てば、働く人のモチベーションや評価も上がってきますし、いい仕組みですね。

林 売れたら嬉しいのは店員なら誰でも持つ感覚です。売上を立てる手段が店頭だけではなくウェブにもあるということに、気づいていただくこともデベロッパーであるパルコの役目だと思います。

カエルパルコを使いたい、使って良かったと思っている店員は、圧倒的に現場の売上を管理しているエリアマネージャーや店長クラスの人です。店の売上を伸ばしたいからECも活用しようと考えれば、本部の方もすんなり納得してウェブ接客の導入を受け入れてくれるケースが増えています。

小関 最後に読者に向けたメッセージをお願いします。

林 STYLERやカエルパルコなどのウェブ接客は今でこそ「ウェブ接客」と言いますが、恐らく近いうちに「ウェブ」という言葉が外れて「接客」になると思います。つまり、今のウェブ接客が接客のスタンダードになるんですね。だから今、ウェブ接客を頑張ってくれているテナントは先駆者なんです。先駆者が頑張って、ウェブ接客の評価が拡散されると、それが標準になってくる。物理的にできなかったお客様への接客がテクノロジーの発達によってできるようになったのだから、最初はハードルに感じるかもしれないけど、楽しみながらやってみて欲しいです。それが回り回って、ファン作りのきっかけになったり、ロイヤリティーカスタマーの獲得になったりします。

・プロフィール


林 直孝(はやし なおたか)

株式会社パルコ WEB/マーケティング部 部長
パルコ入社後、全国の店舗、本部や関連会社でWeb事業を行う(株)パルコ・シティを歴任。2013年「WEBコミュニケーション部」に着任し、同社のWebを通じた顧客コミュニケーションやオムニチャネルの戦略立案と実務を担当。2015年より「WEB/マーケティング部」で、店舗のICT活用やハウスカードとスマホアプリを連携した個客マーケティングを推進している。

小関 翼(こせき つばさ)

大手EC事業者のAmazonにて事業開発を担当。インターネット上で取引をされるアイテムの種類に偏りがあることをECの現場にて実感する。ネットとリアルをつなげることで、情報の非対称性からEC比率の低いライフスタイル領域で日本発のイノベーションを起こすことを目指す。2015年3月に“つながり”でファッションを楽しくするスタイラー株式会社を設立。日英のメガバンクに勤務経験あり。東京大学大学院修了。

FashionTech対談ではスタイラー小関と対談してくれる方を募集しています。詳しくは、info@styler.linkまでお問い合わせください。

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Text&Edit : 編集長Y


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