【Fashion Tech】ファッション業界の課題は○○にあり!?マネックス証券代表松本大さんに聞く

NEWS 2015.10.21
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ファッション×IT業界で活躍するトップランナーとSTYLER代表の小関が対談していくFashionTech連載!この連載では対談を通して、スタートアップで起業されている方などに、ファッションITの視点からファッション業界の未来について語っていただきます。

第十二回は、スペシャル企画としてFashion×IT×Financeでお届けします。対談相手はマネックス証券株式会社の代表取締役社長CEO 松本大さんです。ファッション業界はテクノロジーに疎いとメディアは報道しがちですが、それは他の業界も同じこと。1999年にオンライン証券会社を創業し、お金との付き合い方を変えた松本さんに、テクノロジーとビジネスの関係について伺いました。

─ お金に執着がなくなったきっかけは、友達のお母さん


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小関 今回の対談ではビジネスへの関心がどのように培われたのかを踏み込んで伺いたいと思います。例えば、アメリカの大手証券会社ゴールドマン・サックス証券でパートナーになられて、上場益を選ばずにFinance×ITで起業をされたじゃないですか?お金へ執着が強い人や、クールにお金が見られない人だとなかなかそういう選択は難しいと思うのですが、昔からそういった性格だったのでしょうか?

松本 いえ、僕はもともとお金が好きというか執着があったと思います。例えば、僕が幼稚園生のときに、おばあちゃんに「誕生日プレゼントなにが欲しい?」と聞かれて、近くの文房具屋に置いてあったおもちゃの手提げ金庫を指して「おばあちゃん、あの金庫が欲しい!」と言ったのを覚えています(笑)。

ところが、大学二年生のときに一緒に暮らしたり、塾をやっていたりしていた友達が資産家の息子だったんですよね。その友達のお母さんが「あなたたち一緒にアメリカに行ってきなさいよ」と言って、当時は30万円くらいするチケットをポンっとくれてびっくりしました。そのときに自分から何かが剥がれていくように、お金に拘っていた価値観が崩れた気がします。

小関 確かに、こだわって集めていたものをポンっと出されると大きな影響を受けそうですね。

松本 要するに自分がお金を持っていなくてもいいんだと気づきました。世の中は分業で、お金、人脈、才能とかいろいろあって、自分はお金はないし、人脈も家柄もない。それでも自分の得意分野を伸ばしておけば、お金を出してくれる人がいるんだ、みたいな。そういう風に能力はあるのに人脈はない、お金はあるけど能力はない、とかいろんなパターンがあって、分業によって世の中が成り立っているのに気がついたというのが大きいです。お金は天下のまわりものなんだと(笑)。

それが十九歳頃のときの僕の中でのメジャー・レボリューションです。人格の上でもあの出来事はすごい大きかった。それでお金に執着がなくなったというか、ちょっと違う距離感で考えるようになりました。

小関 一歩引いて、このお金というのはどういう風に活かされるものだと。

松本 例えば、ゴールドマンを辞める頃もIPOの直前だったので、数十億円のお金が目の前にありました。でも、そんな大金をもらって辞めたら、自分が潰されちゃうんじゃないかなと思って違う道を選びました。そういう選択ができるのは、やっぱりちょっとお金と距離があるからで、距離がないとそういう考え方もできないでしょ?やっぱり、友達のお母さんが十九歳頃にしてくれたことが、すごくハマったんですよね。

─ 金融業界では毎日事件が起こっている


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小関 二十歳前後でそういう経験ができるのは貴重ですね。直後に就職をすることを考えるとキャリアの視点からも面白いお話かと思います。就職をする際に外資の金融機関を選ばれましたが、当時ではあまりメジャーな就職先じゃないですよね。

松本 あまりメジャーじゃないどころか、どマイナー(笑)。当時の外資系金融機関のマイナーさは、今では想像できないくらいだったと思いますよ。当時はリクルート社から就職を控えた学生に「リクルートブック」という本が送られていたんです。全ての企業が載っている分厚い本で、その中の730ページ目くらいにちょろっと薄く、最初に就職したソロモン・ブラザーズが入っていました(笑)。でも、それを見て、ここに行ってみようかなと思ったんです。

小関 選ばれたのは新しいものにチャレンジしたいとか、お金を一歩引いた立場から扱うような仕事に興味があったという感じなんでしょうか?

松本 いや、お金は全く関係なくて、それどころか入社するソロモン・ブラザーズという会社も、そこで自分が得る給料も実は気にならなかったですね。ただ金融は面白いんじゃないか、飽きないんじゃないかと興味がありました。例えば、製造業へ就職しても、どのメーカーに行っても結果が出るまでにすごい時間がかかったりする。若い人は、二十代は訓練で終わるみたいな。

それが金融に行くと毎日のようにマーケットが動いたりとか、毎日困っている会社と絶好調の会社を繋いだりとか、何か事件があるんじゃないかと思いました。あと外資系といっても、当時のソロモン・ブラザーズ日本オフィスは社員が四十人とか。ゴールドマンもその頃は十人くらいで、ベンチャーみたいなものだった。なので、その人数しかいないのなら、入社したら若いうちから活躍できるんじゃないかと思いました。とにかく若いうちから経験量がすごく多いだろうと考えたのが、唯一にして最大の理由ですね。

─ 今、僕が大学生だったら日本の大企業に行くかもしれない


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小関 今はスタートアップや少し大きくなったベンチャーに優秀な学生が就職することが少しずつ増えていると思うんですが、当時だと珍しいケースだと思うんですね。

松本 当時はベンチャーなんてありえないし、外資でもありえない。基本は銀行、商社、大蔵省みたいな(笑)。

小関 一方で二十代、もしくは学生がスタートアップをしたりするのはどうお考えでしょうか?マネックスベンチャーズで投資のお話されることもあるかもしれませんが。

松本 まあ、いいんじゃないと思いますよ(笑)。だけど、スタートアップだけが良いとは思わない。今、僕が大学生だったら日本の大企業に行くかもしれない。大企業は今、試行錯誤しているようだし、優秀な人も昔ほど行こうとしていないかもしれない。でも、持っている地盤というか看板は大きい。今なら大企業に行って、そこを全速力であがって、会社を改革して動かすっていうのが面白いんじゃないかなと思います。

小関 そういうターンアラウンドに参加した人は成長するとはよく言われますよね。

松本 でも、スタートアップもいいんじゃないかとは思いますけど、それがブームだとね。ある意味では今まで流行った就職先のテレビ局とか、商社、外資系とかと全く一緒ですよ。僕は超流行ってないところに行きたい(笑)。

外資の金融機関にいた時も新卒採用の面接を頻繁にやっていたんだけど、流行りで学生が集まるときはダメなんですよね。面接で「他の会社はどこを受けてるの?」って聞いたらテレビ局とか(笑)。そういう年の新卒は伸びないんですよ。

選択肢が増えていることは良いことだけど、形式的にスタートアップすることが良いことじゃなくて、人生の中の幅広い選択肢のなかで、自分がやりたいこととか、自分でこれから生きていく上でより良い選択は何かを考えるべきなんじゃないでしょうか。人より良く生きたいと思ったら、相対的に他人に勝てないとあまりベターな人生は歩めない。そうするとみんなが行くから行くっていうのはあまり良い選択じゃない気がします。もっと真剣に考えると、みんなが同じ方向に行くならスペースが空いているところがあると気づいた方がいいと思う。

─ テクノロジーの価値は便利でなんぼ


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小関 マネックスでもMITメディアラボに人を派遣したり、保有する投資信託のポートフォリオ分析ができるアプリ「answer」をリリースされていたりしますよね。マネックスはテクノロジーを使って人とお金の付き合い方を変えることを目指していると思うんですが、今後のテクノロジーの活用についてはどのようにお考えでしょうか?

松本 テクノロジーは人々の生活に欠かせないものとなっていると言っても、その価値は便利でなんぼですよね。なので、わざわざ「テクノロジー使ってるぜ」というのを前面に出して、あまり便利さが実感できないサービスはイカンと思うんですよ。

小関 確かに最近だと自社のウェブページに技術的なバズワードを並べて、過度に宣伝しているところも多いです。でも、そういうバズワードってユーザーにとってはあまり関係ないのではないかと思います。例えば、水質をあるテクノロジーで管理して美味しい水が飲めますと言っても、ユーザーにとっては水の美味しさ以外は関係ないんじゃないかなと。

松本 ユーザーが快感を味わって、初めてテクノロジーは意味があると思うんですよね。そういうテクノロジーじゃないとイカンと。

小関 それこそマネックスなど2000年前後のネット証券登場で、店頭に行って証券を売り買いする必要がなくなりましたもんね。

松本 便利になったでしょ?オンライン証券なんてある意味あまりテクノロジーは使ってない。だけど、オンライン証券というビジネスモデルは人の生活をすごく変えたと思います。以前のように店頭に行くなんて考えられないし、誰でも売買できるようになった。それってやっぱり意味のあることですよね。

僕がマネックスをソニーと創業した理由は、まさにソニーのような電機メーカーがテクノロジーで生活を変えているんだって当時思ったからです。テクノロジーで本当に生活が良くなったものってある?って考えてみると、自動車だって大して変わってないし、服だって全然変わってない。ただ、エレキの世界だけは違った。昔だとテレビ業界に就職しないと動画撮影ができなかったのに、一般人でもできるビデオカメラを発売していたんですよね。今は当たり前だけど、僕らが創業した頃は写メがない時代ですから(笑)。

そこで、エレキの会社にバックアップしてもらうのが我々のコンセプトを伝えやすいと考え、その中でもブランドが良くて、綺麗で、清潔な印象のソニーと創業をすることにしました。

─ 金融業界から見たファッション業界の課題


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小関 ここからはファッション業界についても伺いたいと思います。ファッション業界はよくテクノロジーに詳しくないと報じられたり、働いている人も自分で詳しくないと言ったりします。でも、金融業界から来た自分からすると五十歩百歩、そんなに他の業界と大差ないと思うんですよね。例えば、松本さんがマネックスを始められた時って、今よりも更に金融へのテクノロジーの活用が遅れていた頃ですよね。どのように周りの人たちを説得されたのでしょうか?

松本 最初にマネックスで実現したいビジョンを紙に書いたんですよ。今でも持ってますけど、ほんの8枚くらいの文章です。「こんな会社を創ろうと思うんだけど、一緒にやらないか?」っていうことが書いてあるんですが、その紙を協力をしてくれそうな何人かに見せても打率3割くらい。

実際に会社創ったときなんて、世の中にはオンライン証券に全く興味ない人も大勢いたんですよ。でも、そういう人には僕も興味なかったんです。最初から同じ方向を向いている人だけを相手しようと考えていました。会社を創るときの仲間集めもそうだし、会社を始めてからのお客さま集めもそう。興味が全くない人に無理に興味持たせようとはせずに、興味がある人が自然と集まればいいと思います。

ファッション業界を見ると、いろんな人に受けるものを作ろうとして、結局誰にもハマらないんじゃないかという気がしますね。例えば、先日ミラノに行ったんですが、イタリアの服を見ると誰が着るんだ?と思うものがありますよね。メーカーも着たい人しか着ないようなものを作っています。そういう思い切りなく、誰にでも着てもらえるものを作っていると、いつまで経っても発展がないんじゃないかと思いました。

小関 「自分のため」という特別さがないので、サービスやブランドへのロイヤルティが生まれないのかもしれないですね。

松本 好きな人だけ相手にしていればいいという思い切りがある方が良いと思います。うちの会社も今は大きくなっていろんな人が働いていますが、会社の考えていることが好きな人がほとんどです。だからこそ、ブランドとかイメージ、存在感を作れたのだと思います。もし創業時に全ての人に分かってもらえる会社やサービスを目指していたらダメだったかもしれないですね。

─ いろんな選択の積み重ねが人生を作っていく


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小関 それではもっと個人的なファッションについてのお話も伺いたいのですが、企業の顔としてファッションにも気を使われたりするのでしょうか?お食事やご旅行も好きですし、人生そのものを松本さんは楽しまれていて、服装とかはオーセンティックなものを好んでいると感じます。好みなどは変化していますか?

松本 物に対する執着はほとんどないと自分では思っているんだけど、案外着ているシャツはテーラーメイドだったりとかするんですよね。

自分の趣味はちょっとずつは変化しているかな。案外しつこいんですけどね(笑)。おそらく創業のときからですが、何の変哲もないシューズでもこだわりがあるんですよ。例えば紐を結ばなくていいようにローファーを選んだりとか、コバが大きく外に出ていないものを好んだりします。あと、ロゴが入っていたり、ブランド感が前面に出るのはあまり好きではないんです。ジーパンだけは分かっちゃうんだけど(笑)。

小関 マネックスもドレスコードは他の金融機関と比べて自由ですよね?

松本 実はドレスコードはほとんどないんです(笑)。男性はタンクトップと半ズボン、サンダルは禁止。女性は特に決まりはないです。タンクトップは英語でワイフビーター(Wife-beater)なんて言って、奥さんを引っ叩く悪いやつが着るイメージだから着ちゃダメと(笑)。あとは何でも着ていい。まあ、そもそもスーツ着たらいい仕事できるわけではないですからね。

小関 最後にユーザーへのメッセージを頂こうかと思います。

松本 Newspicksの「イノベーターズ・ライフ」でも引用しましたが、Amazonの創業者ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)がプリンストン大学の卒業式でスピーチした言葉が好きです。”In the end, we are our choices.”。いろんな選択の積み重ねが人生を作っていく。それは大企業に入るか、スタートアップに入るかも選択だし、実際に社会に出て問題に対処するときも選択。上司の間違った言葉をいやいや聞くのも選択だし、それを否定するのも選択で、全部選択ですよ。その一つ一つの積み重ねが自分の人生を作って行きます。若い人はこれからも無数の選択の機会があり、それがチャンスでもあり、試練でもあって、それが自分になるので、まあ頑張ってねって感じです(笑)

─ プロフィール


松本 大(まつもと おおき)

1963年、埼玉県生まれ。東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券に入社。その後、米投資銀行大手のゴールドマン・サックス証券に移籍。30歳で同社最年少パートナーに就任。1999年オンライン証券の草分けとなるマネックス証券を設立。現在、マネックスグループ及びマネックス証券CEOを務める他、株式会社カカクコム、株式会社ジェイアイエヌの社外取締役を務める。

小関 翼(こせき つばさ)

大手EC事業者のAmazonにて事業開発を担当。インターネット上で取引をされるアイテムの種類に偏りがあることをECの現場にて実感する。ネットとリアルをつなげることで、情報の非対称性からEC比率の低いライフスタイル領域で日本発のイノベーションを起こすことを目指す。2015年3月に“つながり”でファッションを楽しくするスタイラー株式会社を設立。日英のメガバンクに勤務経験あり。東京大学大学院修了。

FashionTech対談ではスタイラー小関と対談してくれる方を募集しています。詳しくは、info@styler.linkまでお問い合わせください。

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Text&Edit : 編集長Y


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